先週の水曜日 名市大が中心で糖尿病と循環器の合同勉強会でした。私は名市大糖尿病の院内教授でもある岡山先生の演題の座長をさせていただきました。
名市大循環器内科教授大手先生の心臓の話がとても面白かったです。心臓の血管を冠動脈と言います。胸痛がある狭心症や心筋梗塞は冠動脈が狭くなります。狭くなった冠動脈にステントをいれて、血管を太くする治療をPCIと言います。一般的に緊急的治療はPCIです。あとは薬物療法です。PCIをした患者さんとPCIはせず、薬だけでフォロ-アップした患者さんでとの比較では、実は予後(その後の再発 死亡率)は変わらなかったことがわかっています。冠動脈の狭くなっているところが必ずしも詰まるわけではなく、中程度に細くなっているところが詰まることが多くあり、PCIは勿論細いところしか太くしないので、中程度に細くなっているところは勿論何もしません。再発の原因で大事なのは血管のつまり具合ではなく、血管を細くしているもの(プラークと言います)の安定性、不安定性だということがわかってきたということです。
動脈硬化学会のガイドラインの元になっている”日本データ”のグラフでは総コレステロール>260で死亡率が高くなっている。これってでもそれ以下では死亡率があまり変わっていないグラフでした。LDL(いわゆる悪玉)<120でも心筋梗塞は起こること、薬でLDLを下げても心血管イベント発症率を2割しかさげないこと。すなわちLDLだけが原因でないことが明確となっております。アメリカの指針では糖尿病、心筋梗塞の既往等のリスクがある45歳から75歳までの方はスタチン(冠動脈を広くする一番の薬)をともかく使用すべきと言っています。これって若い年代と高齢者はLDLを下げる必要がないとアメリカは言っているらしいです、これは驚きです。
脂質異栄養学会(LDLを下げすぎると死亡率が上がる)と動脈硬化学会(ともかくLDLを下げることが大事)のコレステロール値に対する戦いはまだ終わっていないように感じました。LDLは結果か原因かはわかりませんが、確実に冠動脈に沈着して内腔を細くしていることは確実です。しかし血中のLDL、我々が指標としている、を下げることでCVDイベントを20%しか予防できません。これも事実です。結論としてプラークの安定性が一番の治療と言われております。LDLの血管内への沈着をみる指標としてはapoBが(LDLに一つのみ存在するもので これが多いとLDLが多くなっており、それは各々のLDLが小さくなっていることを意味しており、小さくなれば血管壁に沈着しやすいという意味)が大事とのことでした。血管内沈着LDLの除去にはスタチンという薬が一役買っているのも事実です。
また中性脂肪がリスクを上げていることも事実。それにはEPAが有効であることでした。そのEPAをいれる量も900mg/日程度でよいとのこと。それは自分の考えと一緒でした。でもいろいろと自分の理解と違っていたので勉強しなおします。
今の大学の見解では スタチンとEPAは飲むべきとのことでした。少なくともEPAはサプリメントとしても飲まれています。EPAは保険診療で我々で処方できますから、市販よりも絶対安いです。相談してください
凄くいい勉強でした。大手先生には再度我々の勉強会に講師として来ていただくよう、お願いしました。日々是勉強ですね。